ニューアクションαの使い方について

「ニューアクションα」で検索して当サイト記事に飛んで来る方が相変わらずコンスタントにいらっしゃる模様なので,いいかげんさすがに「マトモに向き合う」記事を書いておこうと思います.当サイトでは同教材を叩いてばかりだったので(苦笑),遅蒔きながらに.

 

そもそも,ニューアクションシリーズ(東京書籍)は,故・服部晶夫先生の監修の下で,高校数学の問題を体系的に分類する段階(※チャート式以来多くの参考書・問題集が取り組んできた通りの道程)を徹底する事によって作成された市販教材です.
当初は,α,β,γの3種類(難易度段階別)が刊行され,幾分遅れてωが書店に並んだと記憶しています(現在ではαとβは残っていますが,他は名前を変えた形で多少異なる位置付けとされているようです).

難易度はω,α,β,γの順に,チャート式(数研出版)でいうところの赤,青,黄,白に相当する構成になっています.
それゆえ,当サイトの記事で既述した通りの「青チャートは使い方が難しい」は,ニューアクションαに関してもおおよそ当てはまる論となります.

但し,先述の通りニューアクションシリーズは「分類が徹底されている」ため,全部こなす事が出来ればチャート式より「漏れ抜けがない」状態にまで至る事も望める,と考えらえます.
従って,ニューアクションαを徹底してやり込めば,確かに東大入試に対応出来る可能性は拓けるという発想も有り得ると言えば有り得ます…但し,東大等最難関大学受験の数学学習としては,ハイレベル出題対応への「上側」が幾分弱いところが残るかと思われます(尚,国公立大学医学部入試に対しては,これだけでは未だ根本的に「徹底」が不足する可能性が高いと思われるので更なる注意を要します).

 

実際の使用においては,教科書傍用教材+学校用解答解説冊子が配布されている事が前提となります.傍用教材の例としては:数研出版なら4STEP,スタンダード,サクシード等,東京書籍では多種類あります.進学校では4STEPが使われている事が多いと見られます.

これらの問題集を日常的にこなしている事を前提として,数学の定期試験が,4STEPならB問題相当~大学入試問題程度からの出題だとして,例えば平均点が30~40点台の試験なら,おおよそ65~70点以上をコンスタントに取れている事が,「ニューアクションα」を使って学習を進めていけるための大前提となります.あるいは,ニューアクションαそのもの(or類題)からの出題がなされる場合でも同様です:基本・標準問題はおおよそ解けている上で,発展レベルにどこまで食らいついていけるか,といった感覚でしょうか.

そして,数学で試験の点数がこれだけ取れていると,高校内偏差値が少なくとも65以上にはなるはず=上位1割以内には入る事になるので,学年内で「数学で名前が挙がり始める」事も珍しくないでしょう.それゆえ,「同級生に返却された答案は見せずに黙っておく」という話が,ここでも出てくる事になります(コーチング的文脈).
尤も,進学校では「切磋琢磨」という発想もあるので,当事者の好みにより「使い分け」していく判断も有り得るかもしれません.但し,「一旦他人に言ってしまうと,引っ込みが付かなくなってややもするといずれ辛くなる恐れがある」可能性は念頭に置いて,注意深く自己責任で判断して下さい.

 

そして,大学受験勉強における数学学習の大局的な流れの中に位置付ける教材の一としてニューアクションαを考える場合には,おおよそ以下のようになるでしょう:

ニューアクションαは,青チャートと同様に,典型的教材として例えば「大学への数学 1対1対応の演習」(東京出版)へ接続しようと思うと,「カブる」レベルの例題が多くなるという難点があります.元々ニューアクションシリーズは「体系網羅性」を重視して作られている為,分量が多い事で有名なチャート式シリーズより更に分量が多い事になるので,この点はいささか看過し難いものがあります.
また,「標準問題精講」(旺文社)もカブる教材です.これらの「典型的教材」との接続相性が悪いという事は,それ自体既に受験勉強計画の選択肢を削ぐ要素となり得ます.

しかし,他方で「やさしい理系数学」(河合出版)や「上級問題精講」へ直接接続するには,学習の水準としてはギャップがあります(青チャートも同様).「やさしい理系数学」は「1対1対応の演習」を演習問題まで終えてから接続して何とか,という程度になると考えられます.

 

こういう意味で,やはりニューアクションαも「使い方が難しい」教材であると言わざるを得ない向きがある事は否めない次第です.
とは言え,βを配布使用として,例えば「基礎/標準問題精講」へ接続して(※後者を採用する場合は若干の要求学力ギャップがある為補充学習が必要となる事に注意),中堅以上の国公立大学をメインに狙う,といった進路計画を目論める教材選定が出来るような進学校も,中々無いかと思いますけれども….

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