難し過ぎる教材・講座に取り組んでいませんか?

当サイトでも繰り返し述べてきている事ですが,目標とする志望校・志望学部・学科等に比して,難易度が高過ぎる教材や講座に取り組んでいる受験生の多い事たるや.この「無駄な8割を止めさせる」事が私共の職責の大半になっている旨,何度でも申し上げます.

他方で,進学校や予備校等のクラス編成における「下のクラス」の質の低さも,この傾向に拍車を掛けているように見受けられます.曰く,下のクラスは「人気が無い」.人気というか人望な気もしますが,その「人望」もが作られた人気に基づくものであっては,担当講師も到底浮かばれないでしょう.

数学を例に取れば,「黄チャート」や「ニューアクションβ」にはこのような心配は無いので,若干の注意点はありますが,標準教材として安定的に薦められます.尤も,本当の初学者には無理がありますので,その点は「それなりの進学校在籍が前提」となっている事には注意して下さい.

「4STEP」や「オリジナル」「スタンダード」「サクシード」等の解答冊子(別冊)付きを与えられている進学校在籍生は,勿論それらも使えます.但し,その進学校の課題・試験範囲にとらわれ過ぎないように,当サイトでも繰り返し述べている通り「本業はあくまで受験生,高校生は副業」との視点を忘れずに頭の片隅において取り組んで頂きたいところです.端的に言うと,B問題以上ばかりを相応の分量で課題として出す進学校は,「使い方」に注意を要します.

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「記述式試験の意義」を明確にせよ e.g.ベネッセ

前回記事 http://wp.me/p6S43T-eD でも述べていましたが,「何のために記述問題をやらせるのか」については,よくよく考えなければならない命題と存じます.

例えば,「数年来にAIが爆発的に普及して人間の『その部分の』知能は要らなくなるから,そこでもなお必要とされる知性を選抜する事が肝要になるのだ」という論題があったとします.しかし,それが凡そ正しいとしてもなお,いわゆる「ラストワンマイル」即ち「この部分だけは導入コストを勘案した結果当面は素手でやる」といった問題は発生しうるのであって,更に斯様な問題は各分野に発生してくるものと考えられます.

他方で,論述式答案で求められている「技能」は,敢えて言ってしまえば「型にはまった」論述技術でしかありません.このあたりを当局がどのように考えているのか今一つ見えてこない最中ではありますが,ここは敢えて強く「このままでは恐らく失敗する」と強調しておきたい.
その具体的内訳としては例えば「東ロボくん」の反省を活かすも良し,ありとあらゆる受験産業の知見が集約されうるところでしょう.殊に,今回大学入学共通テストの記述式問題採点を落札したベネッセコーポレーションなどはまさにその「受験産業」の雄でありますから,活かせる知見を全面に活かせば出来る事は少なからずあるように思われます.私見ながら一言までに.

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「大学入学共通テスト」の記述式採点がベネッセに一括落札された件で

「新テスト」記述式問題採点をベネッセグループが落札。民間企業に頼り切りの大学入試改革でいいのか?
おおたとしまさ |育児・教育ジャーナリスト
9/1(日) 11:36
https://news.yahoo.co.jp/byline/otatoshimasa/20190901-00140773/

 

個人的には,1業者落札自体は倫理観の問題としてもコスト面でも大した話ではないと思っているのですが(要するに「必要コスト」と見るだけの立場),問題はその業務の内訳です.

筆者の存じる限りで,記述式問題の採点方法(予備校等)はほぼ「条件加点・減点」に限られています.無論,東京大学2次試験(個別学力試験)等においてはそんな事はないのですが,腕に覚えのある方は,駿台全国模試や各種東大模試等で「記述式採点」の洗礼をとくと味わって下さい.おそらく「クソゲーもここまでやるか」との感を抱くに違いないと存じます.

大規模記述式採点の場合,基本的には「ポイント(箇所)毎の加点・減点」という方式が採られます(例外は東京大学教養学部で,一人の採点者が各科類毎に全部採点します).という事は,「あまりにも上手くまとめ過ぎてしまったが故にキーワードを外して減点を食らう」受験生も少なからず発生するという事になります.そんなものが公的に「記述式試験」を名乗っていいのか.筆者にはこの点が少なからず疑問であります.

この意味では,今回落札した業者がベネッセ以外でも,更には複数企業であろうとも大差無い.問題の本質は「記述式解答の採点をマトモに出来る人材が足りていない」事であろうと,筆者はつねづね思っています.国立大学の教官を総動員して採点させるという地獄絵図も考えられますが,これ以上の負荷を本来「研究者」たる身分に与える事は,決して適切ではなかろうと思います.

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線維筋痛症患者の私にデュロキセチンが劇的に効いた件

担当医が一度は「処方しない」と判断したデュロキセチンを,勝手に手に入れて(方法は各自察して下さい)飲んだところ,これが劇的に効きまして;今までの労苦は何だったのか,というレベルで.

デュロキセチンは抗うつ薬(SNRI)ですが,線維筋痛症への適応もあり,要するに「線維筋痛症とうつ病は同源」と言っても過言ではない程度の話です(日本語版Wikipediaが比較的詳しい: https://ja.m.wikipedia.org/wiki/デュロキセチン ).疫学的には未解明の部分もあるようですが,直感的には「そりゃそうだよな」という印象です.佐藤優氏仰るところの「うつ病は『心のカゼ』ではなく『心のインフルエンザ』」との言にここは同意しておきたい.
師匠の苫米地英人博士に知れたら「線維筋痛症を辞めれば良かろうに」などと言われそうですが,自力で治せなかった際に「道具」としてのデュロキセチンを使う事は,決して悪くない選択肢の一ではないかと思っております.なお言うまでもなく当然の事ですが,「デュロキセチンが効いた」というのはあくまで私の場合です.線維筋痛症患者・関係者の方々へは参考情報としてお届けしたいと思って書いておりますが,必ずしも「成果」を保証するものではないという事を,御理解頂きたく存じます.

また問題は,これが長期的にも効力を保ってくれるか,という点に懸かっています.今のところは未だ「勝手に手に入れた分を飲んだ」結果の観察に過ぎないので,より長期規模で経過観察をしてみたく,速報申し上げます(なお,現在は既に主治医によってデュロキセチンの処方を受けています).
あとは投与量の調整も必要と思われます.取り急ぎ.

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受験生本人が「学校(ないしは予備校)信者」の場合-そもそも科学とは何か

当サイト主宰は,これまで多くの「進学校信者」たる保護者の方々を説得し,受験生本人の志望校合格に結びつけてきました.
ところが,最近,受験生本人が「進学校(在籍校)信者」になってしまっているケースを,多く目にするように感じられてきました.

確かにこれまでも,「受験生本人が進学校信者」という類型は存在していました.しかし,筆者のところへ来るような「一発逆転」を狙う受験生が,「進学校信者」のままでいるという状況には,戸惑いを禁じ得ません.
自分自身で「現状では足りない」と気付いているからこそ,筆者のような職能者のもとを訪ねるのではないのでしょうか.

 

科学(Science)は一般に,「疑うこと」の連続です.その過程を一時でも放棄しては,論理論証の積み上げは成り立ちません.大学受験生という限られた領域においても,そこに通底する「科学の精神」は,ぜひ忘れないで頂きたいと,心より願う次第です.

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某進学校で「ニューアクションα」が採用されている件について

「ニューアクションα」とは,レベル感としては「青チャート」と同等と思って頂ければよいのですが,以前にも書いた通り,この「青チャート」の使用に際しては,決定的な問題が存在します.これが「β」(黄チャート相当)ならまだ良かったのですが….

「青チャート」の場合には既に「置いていかれている」実例が広く知られるようになってきていますが,ニューアクションシリーズの場合には未だそういった知見が広まっていないようです.この事も,本件においてマズさを助長している一因となっています.

正直,ニューアクションα(ないしは青チャート)を用いる事が出来る為には,センター試験で数学9割レベルの基礎学力が必要です.逆に言うと,そこまで登りつめる為にはどんな学習をすれば良いのか,疑問に思う向きが生じても何ら不思議ではありません.
そこへきて,「最初からニューアクションαを使用する」という無茶がまかり通っている現状では,これ以上の「実績」向上は到底望めないでしょう.
先進的な取り組みを続けてきた進学校であるだけに,決定的なところで残念な状況に陥っているのは誠に勿体無く思います.

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性別を「証明する」のは案外難しい??

少し前の事ですが,当サイトに「性別欄を公的書類を用いて証明したい」と思しき方からの検索アクセスがありました.

確かにこれは悩む.

私の場合,もし例えばトイレ等で捕まって「証拠を出せ」となった場合には,健康保険証の裏面を使いますが(と言うか,それ以前に「取調べ権限」の点で警察への引渡しを求めますが…),住基カードも随時「スリーブに入った」マイナンバーカードに置き換えられていく中で,公的に「性別を証明する」という事は,むしろ難しくなっている状況と言えるのかもしれません.

当サイトでは,筆者の個人的ポジションから,一貫して「性別欄を消す」方向の話ばかりをしてきましたが,「証明する」となると逆の問題が随時発生し得るのだなぁ,とあらためて思いました.

ちなみに,日本国籍者の場合には,現状「旅券(パスポート)」の性別欄が使えます.…これも,筆者が一貫して「第三の表記を」と求めている対象である事は,当サイト読者には御承知の通りです.

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東大(典型的には理一)と,医学部受験との違い

「当初東大理一志望」者の指導(クラス担当)をしていると,しばしば「医学部(それも往々にして国公立)との両にらみ」といった意見を聞く機会があります.
確かに,偏差値的難易度からすれば,東大理一と国公立医学部は「比較の対象」になる訳であって,それは即ち「相互乗り換えの検討が生じてくる」事を意味します.

ですが,私は一指導者として,この論にはおおよそ反対に近いものを持っています.
最大の理由としては,東京大学(理科一類・二類)の場合には「得意科目が2つ以上あれば(たとえ多少のミスをしても)受かる」のに対して,国公立大学医学部(実は私大医学部もそうですが)は「いかにノーミスに近づけるか」が勝負となっている場合が多いからです.もちろん,中には信州大学のように,東大理系並みに「難しい問題でいかに得点をもぎ取っていくか」を問われる大学も存在しますが,多くは「標準的な問題で,高得点帯での勝負」になっているという事情があります.

という訳で,これら(「難しい問題でそれなりの点数を取る事」と「やや易〜標準程度の出題に対し高得点を取る事」)が同じ意味を持つ人にとっては,上述の「乗り換え」はアリなのですが,そうでない人にとっては,決して有利な選択肢とすら言えなくなってくる事になります.かく言う私自身もそうで,東大だから受かったようなものの,ここでうっかり国公立医学部を目指していようものなら,目も当てられない結果になっていた事は想像に難くありません.

受験生の皆さんは,どうか「偏差値表」から見える情報のみに踊らされる事無く,冷静に志望校を見定めて頂きたいと願うばかりです.無論,我々指導者にはそのノウハウが蓄積されていますので,最寄りの適切な指導者にアドバイスを貰う事も推奨されます.

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当サイト主宰ブリザムは,高校卒業後の進路(大学進学等)における各方面へ向けた進路アドバイス・学習指導(大学受験コンサルティング)を提供します.また,指定校推薦等対策(内申対策)における経験実績をも有しています.

下記の通り,当サイトでは無償アドバイスと有償アドバイスのいずれかを御用意しております.御希望に合わせて対応いたしますので,以下の内容をお読み頂き,御要望に合う方を選択して下さい:

◆無償
依頼者のペンネーム(無ければイニシャル)を併記させて頂いた上で,「当サイト読者からの質問に答える形」で記事とさせて頂きます.
この利点は無論,費用が掛からない事ですが,欠点としては,「当サイト読者一般に向けてのアドバイス」となる為,個別指導としての効果が薄くなる可能性が挙げられます.

◆有償
アドバイス内容について,(無償の場合と異なり)原則としてサイト他での公開はしません.指導希望者の志望に出来る限り即した形で,具体的な進言を提供します.価格は1万円となります(銀行振込).
お申込みを頂いた際にお伝えする銀行口座に上記金額をお振込頂いた後,電子書面の形で個別指導内容を提供致します.

また,有償アドバイスを御利用頂いた方が,後に当方の個別指導を受講される場合,上記金額を差し引いた価格で個別指導を御提供させて頂きます.

御希望の方は,eメールアドレスnlimeblizzam【at】hotmail.com(【at】→@)まで,
タイトルを「大学受験コンサルティング希望」とし,
●名前(保護者の方から御連絡を頂く場合は生徒様のお名前も)
●有償または無償のいずれかの希望
●無償アドバイス希望の方はペンネーム
●住所(郵便が届く場所:本人確認情報として使用します)
●セ試自己採点結果(科目別及び総合点)または模試等の結果
●志望大学・学部・学科・入試方式等(第3〜5希望程度まで,私大一般入試等併願校がある場合にはその情報も出来る限り)
を御記載の上,お送り下さいませ.

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次期学習指導要領は良いが,「文理差別」が強化される上,理想論でもある

少し前の事になってしまいましたが,高等学校次期学習指導要領の話題が報道に上がっていました:

高校の数学に「行列」復活も、国が本腰入れるAI人材教育の詳細が判明
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02190/

「行列」単元が復活するという話は,大分以前から出ていた通りです.
そして,以前記事でも述べていましたが,現行課程だけが「行列」単元を履修していない「穴」になってしまう…という可哀想な事情には変わりありません(代わりに「複素数平面」でその特別な場合が扱われています).

また,記事の内容を見ると,ベクトルが「数学III・C」へ移行導入される模様です.
この点について,ベクトルを行列と連携して学ぶ事自体は意義のある事ですが(行列を初めからベクトルの変換群として取り扱う事が出来る為),いわゆる「文系範囲」数学IAIIBから外れる事については,当サイトは問題意識というか危機感を持っています.
現行課程で数学IIが「重い」事を考えれば止む無しとも言えるのかもしれませんが,「文系/理系の壁を取り払う」話との整合性は,さて置かれたままのカリキュラムとなっています.

学習指導要領の一部改訂や教科書の一部訂正などの制度
実はこの制度自体は従前からあったものですが(前期指導要領中でも実際に導入されていました),上述の問題点はこれらで補える代物では到底ありません.

そして,「年間25万人」といえば,高校課程で「理系」を選択する“約3割”と言われている人達の大多数です.それらの人々に「ベクトル+行列」を万全に履修習得せよ,と今回提言は述べている訳です.理想論を提示する事は大所高所からの話としては決して悪くはありませんが,果たして当局は実情を見て話をしているのか?という点では大いに疑問が残ります.
個人的には,それよりも先ず「各課程での修了要件の厳格化」をやはり挙げたいと思っています.

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「高校普通科見直し」で数学の脱落者が増える甚大な懸念

前回記事で「大学入学共通テストに付随する英語外部テストの問題点」について指摘しましたが,もっと問題なのはこちらです:

高校の普通科 大学入試重視の見直し提言へ 自民
2019年5月12日 4時06分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190512/k10011912971000.html

どの口が言うか経団連.

提言の案では、今の高校の普通科について、「偏差値で輪切りされ、大学入試に困らない指導をするあまり、生徒の能力や個性を伸ばせず、学習意欲が低下している」と指摘しています。
(中略)
また、文系、理系を横断した教育の充実を図り、それに応じて大学入試の見直しも進めるべきだとしています。

大学進学率が5割を超えている現状,恐らくは単に「数学III(次期学習指導要領では数学III+数学C)を必修とする普通科」が増えまくって,結果脱落者が出まくる…という惨劇がありありと脳裏に浮かびます.

そもそも,「文系/理系」という区分けの有り様自体,就活で求められてきた分類に他なりません(端的な例として:「おたくの学科は文系・理系のどちらですか」と企業から訊かれた…という旨を,明治大学の阿原一志教授が,以前にブログで仰っていたと記憶しています).
そして,それが「文系≒数学が出来ない」という構図にまで陥ったという流れについても,当サイトで再三指摘している通りです.

そこへきて,「文系、理系を横断した教育の充実を図り、それに応じて大学入試の見直しも進めるべき」とは…私どもの仕事は増えるだけですが,高校生・大学受験生の中からは,恐らく相当数の「脱落者」が出る事と予測されます.無論,これまででも「最上位層」の大学進学者は文系でも数学をマトモにやってきていた訳ですが(東大文系,慶應−経済,一橋,…),それを一斉に「大学進学者」まで拡張する(そうすると,ほぼ自動的に「進学校在籍者」i.e.大学進学者以外も含まれる)となると,目も当てられない惨状が思い浮かんで仕方ありません.

高校数学に関して「脱落者を減らして履修を完遂出来る生徒の割合を少しでも増やす」方策が,一刻も早く(遅くとも次期課程開始以前までに)整備される事が望まれます.

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