「大学入学希望者学力評価テスト」の導入で,記述式試験に対応出来る指導者の養成は既に急務である

既に広く報道されている通り,センター試験の事実上後継となる「大学入学希望者学力評価テスト」(平成32年度より実施)において,一部科目に記述式試験を導入する方向で計画が進められています.

 

これに際して,教育指導者の舟生貴士さんは下記の通り御意見を表明していますが,

https://twitter.com/T_WhoNew/status/679725902196944896
『論理的思考力』の重要性が、ますます高まりそうです! 暗記などしないで、自分の頭でしっかり考える力を育てましょう! (^O^)

実際問題としては,記述式試験に正答する為の受験勉強の方法技術もまた「型稽古」の範疇である事には違いありません.「暗記では通用しない」などと言っている人は,その大半が暗記の定義というか適用対象を根本的に間違えているだけであって,「方法論ごと暗記」する形での試験対策は,論述式試験(小論文等を含む)に対してもなお有効です.

(尤も,舟生さんの場合はそれ以前にパーソナルコーチングのプロなので,テクニカルに細かな方法論を一々伝達するまでもなく,より大局的な指導に基づく成果を挙げる可能性は存分有ろうと思われますが,今回はコーチングの有用性についてはひとまず主題から脇に置きます).

 

ところが,拙外部ブログ記事でも触れた通り,現在に至るまで長きにわたって,この「日本語論述」の方法技術を的確に修得させる為の教育システムは,露骨に言えば殆ど機能していない,というのが実態です.
少なくとも私が個別指導で担当した教え子は「全員」が論述を出来るようになっていますし,方法論自体もとっくに確立されているはずなのですが,こと集団指導システムで実施しようとすると,事実上何らかの限界が殆どの教育現場において見受けられます.その限界をつくっている原因が何故なのかは,今一つ不明ではあるものの.

そうすると,来たるべき平成32=西暦2020年度において,日本語で「記述」の方法論を教える指導者が,圧倒的に不足するとの恐れが,かなりの確度で見えてきます.

これは即ち,「指導者の養成」こそが急務である,という事態に他なりません.

かく言う私も,個別指導者の一として職責を道義的に考えていく一端で,「先ず早急に指導者を養成すべし」との結論にまでは達し,具体的な「記述式試験対策学習用の教育指導者養成ファシリテーションプログラム」を脳内シミュレーションで設計してみたりしたのですが,どうにも今一つ,明晰な光の差し込むような展望は未だ見えていません.

一応,「指導者養成プログラム」の計画骨子案はあるので,実現可能性(受講者を集められるか,会場運営等の繁雑事務,営業が成り立つ価格設定,等)の目処が立てば,プログラムを開催したい意向はあります.「我こそは日本の将来へ教育を重視すべく,マネージメントに助力したい」と仰って下さる方がもしあれば,ぜひお声掛け頂きたく宜しくお願い申します.

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いじめを隠蔽した私立学校が発覚

【2016.10.30追記】アクセスログの検索キーワードを拝見していると(直近のGoogle上位表示が大きく効いている事かと存じます),当記事のみに辿り着いて一読している方も少なくないようです;が,内容上問題本体の事態は刻々と進展しているに違いない事ですので,せめて当サイトの補足的続論記事(いじめの根源と,対策…のウソ http://wp.me/p6S43T-5P)を合わせて御一読頂きたく,強く要望申します.

―――

どこぞの高校で,いじめ実態の隠蔽とも受け取れる校内放送(校長発言)があったそうで,一見して背筋が凍る思いをしたので,遅ればせながら拙記事でも情報共有に供したく存じます:

https://twitter.com/ts_Oreo/status/676373478992297984
この前学校で「いじめられてた子が裁判を起こし、いじめてた子達を起訴した。裁判は誰でも起こす権利はあるが、いじめなんていう個人の問題でいちいち迷惑かけるのやめて欲しい。双方の言い分が違うので、学校はいじめは無かったとして反論していく。」と放送があって、本当クソみたいな学校だと思った

https://twitter.com/ts_Oreo/status/676421189263200256
@myonalice それで間違いないと思う。放送で学校の品位がどうとか言ってたし

https://twitter.com/ts_Oreo/status/676374224437555200
これ校長が言っててふざけんなって思った。これがテレビで「いじめは確認出来なかった」の実態なんだと思った。

https://twitter.com/ts_Oreo/status/676399221197541376
@yuq1_ ですよね…!とにかく、色んな人に見てもらって、色んな意見を聞きたいと思ってます

 

また,当該事件を取り上げていると見られる報道記事はこちら:
「同級生のいじめで退学」愛知県の元生徒が提訴、高校は「いじめはなかった]と反論
http://www.sankei.com/west/news/151207/wst1512070067-n1.html

愛知県安城市の私立高校「安城学園」で、同級生からいじめを受けたのに学校が適切に対応せず退学を余儀なくされたとして、名古屋市の元女子生徒(16)が元同級生4人と学校に約560万円の損害賠償を求め、名古屋地裁(村野裕二裁判官)に提訴した
(中略)
被告側は「いじめはなかった」として請求棄却を求めた。
(中略)
一方、安城学園は「調査したがいじめは存在しなかった。法廷で事実を徹底的に明らかにしたい」とコメントした。

 

ツイートの「校内放送」に関して,事実関係自体の裏を取った訳ではありませんが,一般論としてもしばしば耳にするような状況(往々にして私学が現場だったりする,との感があります)の一端が垣間見えているようで,「願わくばそんな酷い事実はありませんように」と思っていた私の祈りは水泡と帰したばかりです.

要するに,一言でいえばクズ案件です.案件というか事件ですが.…学校が圧力を掛ける方向で憲法違反を推奨しているという状況は,最悪とさえ言えようレベルの事態に間違いありません.

更に,本件に関しては,元ツイート発言主以外のところから「安城学園」という具体的な学校名もが出てしまっていて,このままではややもすると「安城学園 偏差値」とか「安城学園 部活」で検索しても「安城学園 いじめ 隠蔽」がサジェストされてしまったりしかねない状況ではないかと見受けられますが,大丈夫なのでしょうか.

ちなみに,同学園の公式サイトでは高校長御自らの顕名により「教育理念」が高らかに謳われています.
http://www.angaku.jp/salutation.html
安城学園高等学校 校長 坂田成夫

創立者寺部だい先生が生涯大事にした生き方は真心・努力・奉仕・感謝という4つの言葉に集約され、四大精神として伝えられています。どれも人間の生きる姿勢として大切なものです。
明治45年の創立以来、100年間、安城学園の卒業生がバトンのようにリレーして伝えてきた創立者の精神です。安城学園を流れる空気そのものです。
真心・努力・奉仕・感謝の四大精神はいつの時代でも、どの社会でも、大切にすべき精神です。私たちの役割は四大精神を実践し、地域社会に広げ、次の時代の安城学園生に四大精神をきちんと伝えていくことです。
安城学園はいつまでも創立者の精神に貫かれた「庶民の学校」「優しさにあふれた学校」でありつづけます。

また,「学校法人安城学園 安城学園高等学校いじめ防止基本方針」なるものも設定されており,公式サイトに常時公開されています.
http://www.angaku.jp/ijime.html
今回の学校側対応(上記引用記事中)が,この「方針」にどのような形で沿って結論実施されたのかは未詳ですが,「調査の結果存在しなかった」としながら「事実関係は法廷で明らかにしたい」というのは,一面的には誠に「背水の陣」であるかのようにも見えます.同学園の関係者総員に対し,爾後の無事と益々の御繁栄を祈願しております.
なお,元ツイート主は絵を描いていて(※当事者がペンネームを使用している点には留意頂きたく願います>当記事読者総員),「今回のいじめ問題発言並みに自分の絵が評価されたらずっと嬉しいのに」という旨の発言もしていますので,ひとまず御本人におかれましては,自らの人生を充実されたく願うばかりです.

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フランク王国の遺産?登記(不動産/法人)と共有(民法他)にまつわる話

当研究所の法務部は「登記調査」も担当しているのですが(宣伝),近日ちょっとした縁がありまして,「共有別荘」の権利関係を調べておりました.

現在でも「オーナーズ」などと呼ばれている会員制宿泊施設は珍しくありませんが,その中でも昭和の時代に設立されたものなどにおいては,不動産所有権登記(共有持分)を伴うものがあり,これが時を経て相続に掛かるなどしようものならエライ事になる,という話です.

時の流れが大変な繁雑法務を招く例は,各種の相続手続きを経験した事のある方なら何かと(往々にして重々)御承知かと思いますが,こと「登記」が関係している場合,最悪「座礁」に近い状態に陥ってしまっている事も少なくありません.

今回当方が調べていた例でも,設立時法人が解散していたり(「物件」そのものは事業承継により引き渡されていたものの,元法人が特別清算に掛かるという有様でした),不動産所有権の変動が未登記(※違法ではない)のまま「所在不明」になっている持ち主も相当数居る様子でした.
事業を引き継いだ側も,「解体」へ向けて権利関係の引き取りを図っているものの,10年単位の期間を経て,途中頓挫した子会社=当時の引き取り元責任担当者 を仕切り直してまで進めている「収拾」の手はずが,進捗状況7割に届くかどうか…という状況になっていて,単に関係者の人数規模が大きくなる事が,ここまで後の複雑さを極める結果を招くのか,と背筋が凍る思いをしております(今回の件では,当初「分譲」された所有者は1000人単位).

マイナンバーによる一括管理で,こういった話も「楽」になるのかな?と思いきや,昭和の時代の話(と言うより,登記事項の電算化が完了する以前のデータ)が含まれる案件ですと,結局は「手作業」が避け難くなって参ります.
今回件では傍観者を決め込んでいる私の手元にすら,数千件の「コンピュータ化される以前の登記簿謄本」がうず高く積もって,既に仕事場のスペースを圧迫してきています.

 

「歴史の(負の)遺産」と言えば,日本では従軍慰安婦の問題や,先年には商船会社が中国に船舶を差し押さえられた,といった事件などが印象に上りがちですが,本例のようにほぼ完全な「ドメスティック」の足元においても,斯様な問題は根深くあるという事を,お伝えしたいと思います.

ちなみに,在日米軍基地の底地については調査確認しておりません.論題の規模が手に余るので…

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【音声】教育とはクライアントの脳ミソを書き換える事である

PodCast音声配信の第2回をお送りします.
前回に引き続き「教育」わけても受験産業を中心とした話題内容ですが,今回は表題の通り,少なからず「きわどい」論題にまで踏み込んでいます.
また,いわゆる「進学校信者」「予備校信者」の(”ザンネンな”)方々についても触れていますので,当事者(学校生徒・受験生・保護者・教諭その他の教育者・教育指導者)には勿論の事,更に辛目の教育論議に御関心のある方にも,意義を御提供出来るかと存じます.

※著作権の一切は原著作者である当サイト運営者ブリザムが保持し,再配布等は不可とします.

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教育というか養育を誰が担うのか,コストを掛けなさ過ぎではないか

駒崎弘樹さんといえば,過日も「ひとり親支援」について論議の”台風の目”的なポジションにあった,その分野では著名な方と認識しておりますが,実は私自身は此の議論についてはあまり深追いしていません.

しかし,そんな駒崎さんの直近の論(下記引用)に関しては,ひとまず全面同意と言えるところです:

政府の「学校の先生に保育士になってもらえば良い!」が、絶対にうまくいかない理由
http://www.komazaki.net/activity/2015/11/004738.html

政府は早く目を覚まして、保育士不足問題の本質である、保育士の給与の引き上げを行いましょう。
1万円上げるのに約340億円、全産業平均にまで引き上げるのに約3400億円です。(出典:http://bit.ly/1NiUjqs )
軽減税率についてはすぐ4000億円用意しようとする政府が、できないわけはありません。

でなければ、1年半後には保育士が7万人足りなくなります。(出典: http://bit.ly/1NiU7aA )

私は先日,知人の慶事で列席した(=託児室等でない)未就学児のお相手を務めさせて頂いたのですが,5時間も一緒になって遊びに付き合うと,流石に体力面での消耗も激しくなります.この個人的経験からも,上記の駒崎さん記事で紹介されている統計調査の回答内容には,体感レベルで信憑性があるものと言えます.

 

「育児負荷」についての議論は既に相当多く公に出ているかと思いますが,直近の報道でも気掛かりな話題がありました:

遊び相手は「母親」が最多 「友だち」は半減
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151129/k10010323281000.html

この報道記事ではむしろ「社会性」を主眼に置かれているようですが,育児負担が保護者(特に母親)に一極集中している実態が相当透けて見えます.

 

そして,今回駒崎さんに全力で批判を受けている大臣の意見に関しては,別の報道でこんな話もあります:

一億総活躍相 成長と分配の両立目指す
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151130/k10010324551000.html

「少子高齢化という日本の抱える構造的問題を乗り越えないと、日本の未来は切り開いていけない。そこで、一億総活躍社会の実現を大きな旗として掲げた」と述べました。そのうえで、「多様な方を包摂できる社会を作ることで、多様性の中からさまざまなイノベーションや生産性の向上が生まれ、強い経済につながっていく。(中略)
また、加藤大臣は移民政策について、「移民政策をとるという考えは持っていないが、高度な人材や臨時的に足りない建設や運輸などの方々に入ってもらうとともに、日本で勉強して能力をつけた方に働き続けてもらうよう、取り組んでいきたい。日本人だけではなく、海外からも来てもらって『一億総活躍時代』を作れば、その先に人口1億人維持というのも見えてくる」と述べ、(後略)

「移民政策を暗に展望する言い回し」と読むべき事の議論がここでの本筋かとは思いますが,「明るい未来が見えるような少子化対策」と言いたそうなのに,其の具体案が「小学校などの学校の先生に、保育士現場に入って頂く」ときては,別の意味で頭を抱えざるを得ません.

 

本来は若年者に限らない事でもありますが,いずれにしても「教育」がこれほどまでに甘く見られる実態は,「亡国」という言葉を安直にも髣髴とさせる程度かと存じます.
ちなみに,私は若年者(概ね「養育」を離れた「教育」の範疇の年齢層相当以上)から大人までの教育を職務として担っていますが,前述のエピソードからもお分かりの通り,ベビーシッターは自分には到底務まらないであろうと思っています.

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