苫米地英人博士のCosmic Radio最新回を聴いた.
https://audee.jp/voice/show/107966
内容は多岐にわたるが,こと教育については日本の現状が散々に言われているので,筆者が専門家として存じるところを述べる.
まず,日本の教育水準は世界的に見て低いとの指摘だが,少なくとも標準カリキュラムである学習指導要領の規定,特に理系教科科目は決して悪くない.アメリカの高校生が平均的に日本の中学生より2桁の四則演算が出来ない事はTwitterでも既述したが,博士著書にある通り「えげつないけれどもフェア」を日本の教育に適用して大丈夫なのかには重大な懸念がある.自動化への移行を担う期間に手当てする公算を精密に設計する前に「やりたくない事はやらなくていい」が文言だけ普及してくれたところで,単に座学が嫌いな若年者多数の言い訳に使われた挙句,彼らがVR空間居住に流れて沈没が関の山ではないか.それも,VR空間構築に貢献してくれるならまだいいが,実態は単なるVTuber推し活が関の山で,SNSのタイムライン上で行われている「大喜利」レベルに終始している生活が大半を占める.実写動画を見ている層にしても,真似事から手習いを始めるのはいいが再生産の成果は未だ全部足し上げても縮小にとどまる.
せめてそのクリエイティビティに1円単位の「いいね投げ銭」でも実装すれば経済規模としては相当潤うが,その御蔭で物理サバイバルが足りた組が各々の仕事を選んで担い始めるまでの経過期間には今一段の繋ぎ段階を必要とするはずだ.PX2でルー・タイスが注意深く「勉強したくなければしなくてもいい」に付言している内容まで含めて確認が望まれる.今月開催分の参加者は7/14(月)まで先着順で募集している:https://bwf.or.jp/archives/3443
US以外の国についても,例えば数学オリンピックで世界上位成績を挙げる国・地域の多くが専制政治によっている事は注記しておく.東アジアには勤勉な国も多いが,日本よりもずっと大学以降の「出口」に恐怖で煽られている社会情勢が背景にある場合も少なくないので,国際規模まで見渡した上で内政を設計する一環として教育を位置付けるべき事には違いないだろう.
一方で,勉強している日本人の多くが「何のためにやっているのか分からない」という実情は否めない.直接的には教育者がロクに伝えていないのが悪い訳だが,より大局的な構造として,日本の教育が大学受験ゴールな事は相変わらずどころか激化しており,その先は無論就職ゴールである.
そして企業の生産性は,少なくともいわゆるJTCに関しては概して低い.設計開発等で日本発世界経済に貢献しているような層は始めから放っといても勝手に勉強する組なのも昭和の頃から変わらない構図で,それ以外の就活ゴール組は親方日の丸なりの既得権益に乗っかっておこぼれにあずかっているのが関の山である.メガバンクや霞ヶ関のシステム開発では50年以上前に弱点が指摘されている方法論を未だ使い続けているし,インフラ最大手の内部管理は情報処理技術者試験の必修項目にも劣る.
此の状況を見るに,カネがあったら仕事はしていない組に退場してもらう方向性自体はアリだと思う.
なお,いわゆる文系の教育が課程もろとも欠陥だらけな点は附記指摘申し上げる.苫米地博士も筆者も一貫して主張してきたディベート導入は,日本語ではなぜか導入されず,現行課程で英語の「論理表現」科目学習指導要領に記載されているが,そもそもディベートの何たるかについては全く言及されていない.これではどう頑張っても使い物にならないので,せめて全員必修の高校数学I「集合と論理」単元を並行活用する事が望まれる.2値論理にとどまらない事象を扱う方法も同じ高校数学の統計分野(数学I「データの活用」と,国公立大学向けに共通テストを受験する際に多くが選択する数学Bに科目設定されている)で学修するので使える.筆者がつねづね述べている「現代文も英文読解も数Iの方法で全部解ける」は今なお有効で,最低限高校卒業程度の学力認定には此の意味での読解確認を含めるべきである.
ちなみに此の段落の話は,今夏公刊される「VTuberの人権」についての成書(Sexual Rights of VTuber,日本語)にも所収で,筆者も内容に関与した.著者の意向もありノンクレジットとしているが,関心をお持ちの方は御確認頂ければ幸いである.