当研究所の法務部は「登記調査」も担当しているのですが(宣伝),近日ちょっとした縁がありまして,「共有別荘」の権利関係を調べておりました.
現在でも「オーナーズ」などと呼ばれている会員制宿泊施設は珍しくありませんが,その中でも昭和の時代に設立されたものなどにおいては,不動産所有権登記(共有持分)を伴うものがあり,これが時を経て相続に掛かるなどしようものならエライ事になる,という話です.
時の流れが大変な繁雑法務を招く例は,各種の相続手続きを経験した事のある方なら何かと(往々にして重々)御承知かと思いますが,こと「登記」が関係している場合,最悪「座礁」に近い状態に陥ってしまっている事も少なくありません.
今回当方が調べていた例でも,設立時法人が解散していたり(「物件」そのものは事業承継により引き渡されていたものの,元法人が特別清算に掛かるという有様でした),不動産所有権の変動が未登記(※違法ではない)のまま「所在不明」になっている持ち主も相当数居る様子でした.
事業を引き継いだ側も,「解体」へ向けて権利関係の引き取りを図っているものの,10年単位の期間を経て,途中頓挫した子会社=当時の引き取り元責任担当者 を仕切り直してまで進めている「収拾」の手はずが,進捗状況7割に届くかどうか…という状況になっていて,単に関係者の人数規模が大きくなる事が,ここまで後の複雑さを極める結果を招くのか,と背筋が凍る思いをしております(今回の件では,当初「分譲」された所有者は1000人単位).
マイナンバーによる一括管理で,こういった話も「楽」になるのかな?と思いきや,昭和の時代の話(と言うより,登記事項の電算化が完了する以前のデータ)が含まれる案件ですと,結局は「手作業」が避け難くなって参ります.
今回件では傍観者を決め込んでいる私の手元にすら,数千件の「コンピュータ化される以前の登記簿謄本」がうず高く積もって,既に仕事場のスペースを圧迫してきています.
「歴史の(負の)遺産」と言えば,日本では従軍慰安婦の問題や,先年には商船会社が中国に船舶を差し押さえられた,といった事件などが印象に上りがちですが,本例のようにほぼ完全な「ドメスティック」の足元においても,斯様な問題は根深くあるという事を,お伝えしたいと思います.
ちなみに,在日米軍基地の底地については調査確認しておりません.論題の規模が手に余るので…