漫画家の種村有菜氏が,いわゆる「二次創作」同人誌の発行予定を中止した事で,関係方面では相当な物議というか炎上案件となっているようです.
容易に推測される状況として,「先に『公式版権下』でイラストを寄稿したタイトルと同作品の二次創作『同人』発行物を出す事が問題になったのではないか」との指摘があります.著作権法云々以前に民事契約違反も充分有り得る局面と言えます.
此の実情の仔細については,種村氏本人名義での直接説明文章も存在しているのですが,これはTwitter鍵付き(非公開)アカウントの内側で述べられていた内容が丸々コピペされている代物だったりして,仁義も何も有ったものではないインターネットの恐ろしさを感じずにはいられません.一応,公開状態になっている情報を以下にリンクだけ御紹介しておきます:
http://tr.twipple.jp/p/13/bff326.html
斯様な状況においては凡そ既定路線もいいところな流れとして,「二次創作のモラルを守って活動すべし」といった言説が,関係当事者からきのこたけのこ戦争並みのペースで沸き出てきます.当然の如く,論議に参加する人の大多数は匿名であり,論題そのものの社会的位置付けのグレーさは素人目にも露骨な程度です.
彼等にとって,今回の事案がいかに「外患誘致」的であったかの一端は,以下のまとめサイトでも存分に概観する事が出来ます(各ツイート等の内容については「全くのデタラメ」も含まれるので,情報源としての利用時には各自御留意の上,自己責任で行って下さい):
種村有菜、突然「おそ松さん」の18禁BL同人誌発行中止へ 理由がヤバすぎると話題に
http://matome.naver.jp/odai/2145750429496489201
上記サイトなどを一瞥すると,のっけから「二次創作はそもそもヤバいもの」という意識感覚が共有されていて,心得の無い方にとってはあたかも無法地帯の人外魔境か何かのように思われるかもしれませんが,実際その通りと認めざるを得ない面も当然有る訳でして(詳述は割愛しますが,著作権法親告罪の範疇で済まない事例も少なくない),それこそ「同人作家は本名と顔がバレたら即死」というデスノートのパロディなど,当事者にとっては笑うに笑えない程度の様です.
尚,種村有菜氏は漫画家(いわゆる商業誌作家)・同人作家のいずれとしても,行政登録上の本名で活動しています.
さて,現代社会において,日本国内法のみへの留意では足りない事は無論でありまして,例えば著作権法なら「非親告罪化」がTPPで話題になった事もまだ記憶に新しいところです.
此の「(法制に代表される)社会的責任」と,「其の責任の所在としての個人の顕名(実名)」という点については,既に私の師匠でもある苫米地英人氏が以前から指摘している通りです(近日参考:https://twitter.com/DrTomabechi/status/705667667584126976).
…とは言うのですが,一方で,現在ハンドルネームという匿名の下に”隠れている”人々を一挙に顕名化などしたとすれば,彼等の活動は即座に停止します:言わば本当に「即死」してしまう訳です(上掲まとめサイトの様子から窺える通り).
そして,此の「顕名即死」組の人口規模が結構な事になっていて(業界に明るい方には周知の通り),大まかに見積もっても国内の「書(描)き手」だけで5万人以上,受け手(読み手)に至っては数十万~百万人程度が,現在進行形で活動しています.
彼等の多くは,平日日中は「一般社会人」として実名で各々の仕事なりを営みつつも,ひとたび休日を中心に開催されている同人イベントとなれば,札束と薄い本が猛速で飛び交う祭りの燃料そのものと化す事になります.
更に其の傍らでは,そんな彼等の活動の「ほんの一かけら」の成果として,特典ポスターに釣られて献血に行って,首都圏近郊の輸血需要を異常な割合で満たしていたり,朝からすき家で牛丼を5杯ずつ平らげて,ワンオペ店員に悲鳴を上げさせたり,といった「社会現象」が発生している訳です.
そうすると,これってもはや,単に「社会的生産性・活動性・経済効果の高い人達」なのではないか,という意見が,さすがに脳裏に浮かんでくる事となります.五百円玉の100枚や200枚を半日で軽く使い切ってしまうような「経済社会的に温度速度の高い人」数十万人を,今刺し殺してしまってどうするの,という話です.
Instagramが今更ながらあらためて持て囃されていたり(広告代理店業界の後押しあっての事とは思いますが),TPP交渉で日本国当局が「コミケ文化」と明言していたり,山本一郎さんの直近記事(http://ironna.jp/article/2922?p=1)でも同人活動者に言及がされていたり,といった社会環境を見渡してみて,そして今回種村氏が「自爆炎上・外患誘致」とばかりに台風の目と祭り上げられている最中で,「顕名即死」の匿名同人関係者各位は,自分達の身の振り方について,果たしてどう考えているのでしょうか.