コーチング的観点から見た逆転合格大学受験指導とは:「そもそもそれはいいのか?アリなのか」レベルの話から

今度はコーチングと逆転合格指導の論です:これもTwitterで盛り上がった話題を整理していきたいと思います.

 

「大学受験は洗脳なのではないか」的な話が流れてきて,実際に洗脳している立場としては「そりゃそうだろ」と思う訳で,QTで引っ張って置いといた訳です:

https://twitter.com/KazmiBlizzam/status/1349572399486824450

ついでに,「本来は最後(進路確定した後)に『逆洗脳』をやらなきゃいけない…んですが」という実情を吐露しておいたら,筆者がコーチでもある旨を御存知の向きから「それはコーチング的にどうなのか」と真っ正面な御指摘が入りまして.

 

結論から言いますと:筆者が「受験指導者」として仕事を求められている限りにおいては,「目前の競争選抜試験で勝つ」事を金科玉条として,大抵は未成年者であるクライアントを,その方向に特化してフルダッシュさせます.

つまり,コーチングで本来冒頭に来るべきところの「ゴール設定」の段階を,そもそも筆者は引き受けていない訳です.クライアントが持ってくる”ゴール”は大体が「現状の外」には在るので,その意味では「ゴール達成」とか「エフィカシー向上」とか「コーチはクライアントの利益100%」といった原則は,満たされていると言っても良かろうと思われる次第ですが.

 

さて,それでは元々の「ゴール設定」の段階がどうなっていたかというと…上述の通り本来筆者のポジション的にはあずかり知らない事な訳ですが,実際にはクライアントのプロフィール(小中高塾予備校他外部教育機関利用状況過去受験経歴本命校併願校家族構成父母職業最終学歴出身校兄弟姉妹プロフィール等々)を職務の補助情報の一環として確認するので,大体は当方にも知れる事となります:
その多くは,実は「中学受験」にまで遡ります.まぁ筆者のところに来るクライアントの育ちってそんなもんですよね.

で,その中学受験(まで)の段階においては,大学進学実績以外にも,校風とか体育祭文化祭その他行事とか在学中留学とか国際バカロレア対応とか外国語コース理数コースとか内部進学条件とか大学卒業後の進路(大学院進学なり就職業種なり)とか志望大学学部分野とか中高の学閥とか受験直前時の80%偏差値とかチャレンジ校と併願校とか塾に受けされられた話とか友達も受けるからとか制服がカコイイカワイイとか校則が緩いとか,それなりに「大学受験志望大学学部学科」以外の方向性も考慮されている事が多くあります;都合良く解釈すれば,ある程度「バランスホイール」的な概念は考慮に入れられている,と見る事も出来ましょう.

ところが,そのクライアントが筆者の元に来るに至った際には,既に設定されている「ゴール」が(なぜか)大学入試合格「一択」となっており,仕方が無いので筆者はやむなく,「その方向を目指して勝つべく突っ走れ!」と指導する事になる訳です.前述の通りそのゴールは確かに現状の外ですし,本人が言ってるんだからWant-toゴールなんでしょう?()
※知ってる人は知ってる「タイガー・ウッズはゴルフで優勝したけど酒に溺れてる話」の類似感であります….

 

そして,ここで問題になるのが,「コーチの職務と越権行為」という論点です.あまり表に出して言う人が居ないので此処で述べますが,コーチの職務の中には「クライアントのゴールを現状の外側に設定させる事」即ち「クライアントを現状の外へ連れていく事」というものが含まれており,これは「クライアントが持ってきた”ゴール”をぶっ飛ばす(※「苫米地式コーチング認定コーチ検索」で筆者の名前か「神奈川県一覧」から筆者のプロフィール詳細を参照)勢いでゴールを更新させうる」という意味で,本質的に「越権行為」という事になります.つまり,コーチの職務は本質的に越権行為をそもそも含んでいる訳です.

じゃあ,筆者が実際の指導でクライアントのゴール設定を更新させる「越権行為」にどこまで踏み込むか,と言うと…せいぜい「志望校のランクアップ」くらいのものです.本来なら「『現状の外側』と『Want-to』の綱引きを上手く着地させながら,『バランスホイール』をも満たしていくゴール設定(更新)を促していく」のがコーチの役割のはずですが,実はここで「Want-to」と「バランスホイール」については,基本的に何らの確認すらしていない訳です.…そんなんでコーチはいいの?と.

 

…いや本来的には全然良くないんですが,実際問題として,受験対策指導時にあらためて「バランスホイール」の考え方をクライアントに突っ込むと,往々にしてぶっ壊れてしまうのですよ.
何がどうって,念のためここでもう一度記事の序盤を読み返してみて下さい:クライアントは大抵未成年者です.という事は,職務を依頼してくる「胴元」は,受益者である生徒の「親」な訳です.この親が,コーチの本務である越権行為を導入した瞬間に「ぶっ壊れてしまう」という話です.

なんでかって,そりゃ受験学年の生徒に「Want-to」とか「バランスホイール」あたりを今更確認導入などしたら,大学受験という「仮のゴール」そのものが吹っ飛びかねないからです;直感的にお分かりの読者もあろうかと存じますが,これは決して珍しい話ではありません.
生徒がPX2http://bwf.or.jp/を受講した場合なども同様です.何しろ,現代に至ってなお「中学受験は親の受験」などといったドグマが幅を利かせている状況ですから,本人のWant-toを再確認したら高確率で「違うゴール」が出てきたりするのはごく尤もな流れであって,それをやったら契約者(民事上の理由で親)との契約前提が丸ごと吹っ飛んでしまいます.

筆者は個人的には別に職務契約が吹っ飛んでもクライアント生徒が幸せになったら良いと考えている向きもあるのですが,「その後」にパトロンである親の庇護を失った未成年の生徒の行く先が順当に進むかは少なからず疑問ですし,また「梯子を外された」親子共々が,それ以上筆者に職務を任せられなくなったとて,さても「後任」は見つからず(そりゃ苫米地式認定コーチの中でも「一度受験勉強という仮のゴールを吹っ飛ばした」後のフォローを出来る人材なんてよほど限られているでしょうから),結局「路頭に迷い込んでしまう」…といった,容易に想像が及ぶ事態の方こそ,社会的リスクとして大きいのではないか,と考える由です.それゆえ,筆者は敢えて「クライアントが持ってきた目標に向かって突っ走れ」のみに専念した職務を提供している次第です.

そして,首尾よく当初の「ゴール」を達成した後に,出来る機会があるクライアントに対しては,一応「逆洗脳」の端緒だけ入れておきます.…これで万端なら良いのですが,実際には経験上,大学受験後の「リハビリ」には,勝った場合も負けた場合もおおよそ2年近く掛かります.そこへきて,東大の内部進学振り分けが入学後1年半という事情(~学部計4年間,大学院修士課程2年間)を考えると…色々御察し下さい._| ̄|○dmp

 

あわよくば,中学1年次後半~2年次あたりでPX2を(親子それぞれ)経由してもらって,「それでも社会的ステータスのある大学に進学したい」と心に決めた上で筆者のところに来てくれれば,テクニカルな受験方法論をそのまま流し込むように提供出来る事はもちろん,コーチングの手法技術も随時「本来の形で」使える事になるので,そういうのがもっと普及してくれればいいんですけどね…それって要するに,PX2が1条校に如何に普及するかっていう話で,正直なところ「よいこ教員」の皆さんには中々「現状の外」って厳しいのではないかという気がしてならない罠ですが,果たしてどんなもんでしょうか.

…そういうク●ゲーがイヤだから,筆者は1条校に行かず「民間教育職」の看板を出している次第でもあったりするのですが.だいたい高校も3年次は行ってないですしね;やはり1条校は一旦更地にして,必要に応じて「現状の外」のWant-toなゴールを前提にバランスを考えて立て直すのがいいんじゃないかという気もしてきます.だみだこりゃ.

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