「高校普通科見直し」で数学の脱落者が増える甚大な懸念

前回記事で「大学入学共通テストに付随する英語外部テストの問題点」について指摘しましたが,もっと問題なのはこちらです:

高校の普通科 大学入試重視の見直し提言へ 自民
2019年5月12日 4時06分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190512/k10011912971000.html

どの口が言うか経団連.

提言の案では、今の高校の普通科について、「偏差値で輪切りされ、大学入試に困らない指導をするあまり、生徒の能力や個性を伸ばせず、学習意欲が低下している」と指摘しています。
(中略)
また、文系、理系を横断した教育の充実を図り、それに応じて大学入試の見直しも進めるべきだとしています。

大学進学率が5割を超えている現状,恐らくは単に「数学III(次期学習指導要領では数学III+数学C)を必修とする普通科」が増えまくって,結果脱落者が出まくる…という惨劇がありありと脳裏に浮かびます.

そもそも,「文系/理系」という区分けの有り様自体,就活で求められてきた分類に他なりません(端的な例として:「おたくの学科は文系・理系のどちらですか」と企業から訊かれた…という旨を,明治大学の阿原一志教授が,以前にブログで仰っていたと記憶しています).
そして,それが「文系≒数学が出来ない」という構図にまで陥ったという流れについても,当サイトで再三指摘している通りです.

そこへきて,「文系、理系を横断した教育の充実を図り、それに応じて大学入試の見直しも進めるべき」とは…私どもの仕事は増えるだけですが,高校生・大学受験生の中からは,恐らく相当数の「脱落者」が出る事と予測されます.無論,これまででも「最上位層」の大学進学者は文系でも数学をマトモにやってきていた訳ですが(東大文系,慶應−経済,一橋,…),それを一斉に「大学進学者」まで拡張する(そうすると,ほぼ自動的に「進学校在籍者」i.e.大学進学者以外も含まれる)となると,目も当てられない惨状が思い浮かんで仕方ありません.

高校数学に関して「脱落者を減らして履修を完遂出来る生徒の割合を少しでも増やす」方策が,一刻も早く(遅くとも次期課程開始以前までに)整備される事が望まれます.

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